2021.05.20

卒業生の職場巡回

 ゴールデンウィーク中は、家でゴロゴロ、片づけは進まず、これといったイベントもありませんでしたが、無事に過ごすことができました。連休中に一つだけやったことがあります。近くのホームセンターに行き、ヘチマの種を買いました。18粒ほど入っていたので10個のポットに分けて種まきしました。小学生の頃、もう半世紀以上も前の話ですが、小学校で育ててヘチマ水やヘチマのたわしを作ったことがありました。現在よく聞かれる SDGs関連の情報番組で、プラスチックごみを減らそうという目標のために、スポンジたわしを止めて自然由来の物を使っている方の実践で「ヘチマたわし」の紹介があり、作ってみようかなと思ったからです。しばらく気にして待っていても、一向に芽が出ず、「ヘチマたわし」への道が早くも断念かと思う頃、5月16日、3つのポットから小さな双葉が顔を出しました。何かうれしい朝になりました。
実は、5月2日、種を撒いた直後、辺りが急に暗くなり、バラバラと激しい物音が聞こえてきて、東村山に雹が降りました。結構な量で花豆くらい大きい雹が路面に落ちるのを目の当たりにしたのは、あまり記憶にない出来事でした。やはりやりつけないことはするべきではないな、と「ヘチマたわし」への道のりの困難さを想像したのでした。だからやっと芽を出してくれてほっとしました。まずは第一歩です。

 4月下旬から卒業からひと月経過した方々の職場巡回を、進路担当の教員に同行して見学させてもらっています。まだ全員ではありませんが、訪問した職場では、みなさん順調に職場に馴染んでいる様子が見られました。「あ、先生だ!」と喜んでくれたり、「どうしているの?」とちらちら見ながら活動したり、反応は様々ですが、「学校は卒業しました。自分の居場所はここです。」というプライドが覗く顔つきをしています。活動や仕事の様子を見せて頂き、お仲間から新人として受け入れられ優しくされている様子や、得意なことを活かして積極的に取り組んでいる仕事もあれば、これから覚え、身につけていくことに挑戦している姿も見られました。就労先の方からも「もうずっと前からいるようです。」「先生方が来ると、いつも以上に張り切る方もいますが、いつも通りマイペースですね。」「実習の時より落ち着いて集中しています。」など日頃の様子や課題を直接お聞きしました。

 B型作業所に就労を決めたAさんは、看板出しや品出しなど仕事を頼まれると、とても良い返事をして積極的に働いていました。遅刻もなく、元気に通っているとの事でしたが、コロナ禍でゴールデンウィーク中いつも楽しみにしていたことができなかったためか、これまでの緊張が解けて疲れが出たのか、連休明けは元気がなかったそうですが、段々ペースも戻ってきているとのことでした。Bさんは、いただいたお給料が予想よりも少なく残念に思ったそうですが、3ヶ月ほどは「見習い」ということを納得し、貯金に行ったそうです。スタートして1ヶ月、これからが長いのですから、急がずに新しい生活に慣れて、本人のペースで実力をつけて、力を発揮できる充実した社会人生活が営めるようにと願います。

 多くの卒業生の進路先である福祉型作業所は、事業所ごとに活動や仕事の内容、大事にしている考え方や支援体制、環境的な配慮などは異なることがあります。どれが良いという事ではなく、利用するその方に合った環境や配慮を提供してくれる事業所を保護者やご本人と共に見定めていくことが進路支援担当職員の重要な役割になります。本校の方針である生涯支援の一つとして卒業生の就労先を見学させてもらい、そこで見聞きした課題に対して、必要があれば早めにサポートし、就労継続できるように支援します。そのお手伝いもしていきたいと思います。

 少しでも環境を配慮していただき、仕事に取り組みやすくなる工夫があればお伝えしていますが、初めはやりにくさがあったとしても、一つずつそこのやり方を覚え獲得していく力を培っていく方が望ましい場合もあると思います。今回の見学でも「何でもこちらからお膳立てするのではなく、自分で困った時にどうすればよいかを考える力をつけていってほしい。」というお話をお聞きし、考えさせられました。何でも先回りして分かりやすく、動きやすく初めから準備をしたものを与えるだけのやり方が、本校の作業学習においてできあがっていないか、という視点です。個人個人の課題にもよりますし、学部ごとの作業学習のねらいにもそれぞれの段階があると思いますが、準備や片づけを含めて作業なのだと諸先輩方に何度も教えられていたことを思い出しました。作業時間が短くなり、いつまでに仕上げるというような時間枠ができあがってくるとメインの活動に焦点が当てられすぐ取り掛かれるようにと、教職員が準備をしてしまっているように見えることがあります。「考えて行動する力を育てる」そのための意欲を引き出し、働く態度を育み、知識、技能を習得できるようにすることが本来の目標ですから、準備段階から始めることや困った時にどうするかの場面設定も盛り込む作業学習を計画することが大切になると思いました。作業学習だけでなく、全ての活動にはその準備が必要であり、やり終わったら片付けて次に向かうことが求められると思います。学校は練習する場所でもあり、失敗から学ぶところでもあります。練習しても世の中が求める力に届かない時、だったら世の中を受け入れやすく変えようという考えもありますし、世の中に適応できるように努力することが必要という考え方もあります。どちらも正しく、バランスを取りながら進んでいくと思いますが、学校よりも長い期間を過ごす職場においても一人ひとりが成長していく姿を見聞きしながら応援したいと思います。

「旭出さんは温室育ちだから。」と言われることも承知しています。温室で咲いた花も素敵ですし、北風の中で咲く花にも感動します。一人一人に適した場所はあるはずですし、見つけなければなりませんし、作らなければならないのかもしれません。

春が過ぎ 自分の居場所 「社会人」

                    2021.5.20