2019.04.18

老化

 平成31年4月8日、平成最後の入学式が行われました。雨が上がり、花冷えの中、福祉園の桜を背景に記念写真を撮ることができました。小学部からクラス毎に、児童、保護者、担任に校長、教頭が加わり、撮影が始まりました。カメラマンの横に教員が並んで片手に持ったタンバリンを鳴らして「こっちですよー。」と声を掛け、児童のみなさんの注目を集めようとしています。ぬいぐるみも登場しました。あの手この手で「いいお顔」を引き出そうとしています。交代した中学部は制服姿で、さっきと比べると、すっと座ってさっと撮れたような気がしました。「中学生ですね、あんなに背が伸びて、今日から先輩ですね、もう3年生になったのですね。」とみなさんの成長の速さに驚いてしまうのもこの時期です。そして、学部が上がるにつれて、一年一年が早く廻ると感じます。一日一日を大切に、今年度も過ごしたいと思います。

 さて今回は「老化」のお話です。私自身に迫ってきた問題でもあります。旭出生産福祉園が創立10周年(1984年)に「旭出生産福祉園の現況と課題」をまとめた冊子があります。副題は「園生(利用者)の老化と処遇について」とあり、35年前にすでに老化について考察研究していました。この年は三木先生が5月に逝去され、この研究も三木先生が推進されていたものでしたが、亡くなられた後の9月に発行されています。私は1981年に旭出養護学校に就職しましたが、当時から福祉園と学校と合同で障害児・者の成長と発達・老化の様子と対応に取り組んでいました。入ったばかりで正直、何をしているのか全容は分かりませんでしたが、小学部の子どもたちの障害の程度やどのような支援をすると着替えができるようになる、といった発達の様子をまとめていました。三木先生が着替えの様子を大きなビデオカメラで撮影していたことを思い出します。

 知的障がい者の場合は、老化が早いと言われています。前出の冊子には、「障がいの特徴の一つとして自発的な行動を起こすことが余りない。遊びにしろ、仕事にしろ、人と接することにしろ、教養を身に付ける努力をしたり、趣味を持つことにしろ、あるいは暑さ、寒さに合わせた衣服の調節とか、食事に関する加減や身体の調子が悪ければ訴えるなどの健康管理に関することにしろ、いろいろな面で自分からは上手くできないことが多いので、その結果、身心の活動を退行させてしまい、それが早期老化という現象として目に見えてくると考えられる。」とあります。

 そして「年齢的に加齢されることは、成長の過程でもあり、身体的な成長は止まり、身体的な衰退はあっても、精神面や社会生活面での成熟度は発達することも良く見られる。人の成長発達とは、単に身体的に成熟していくことではなく、精神面や様々な能力の発達が伴っていくことである。人が社会人として育っていくためには、身体的・精神的諸機能や諸能力を上手く活用して、『より良く生きて行こう』『がんばってやろう』というように生活の営みを意識的に推進していくものの発達がなければならない。それがいわゆる自己あるいは『自我』といわれるものの発達であり、『自我』こそが人間の生活を規制し、人間を形成する心棒になっていると考える。」

 三木先生は、「自我」をつかさどるものとして、①物事をやり遂げようとする意欲、やる気、②物事に接して生じる情緒、感情、③物事をわきまえる自制心、自己統制力の3つを挙げています。やる気を起こさせるためには、やりたくなるような材料を準備し、できそうなことから始めてできたら褒める、できたという達成感と自己肯定感を育てる環境を意図的に調整することです。やる気はやる気を呼び、生活を活発化させますので、早期老化傾向の抑制にもつながります。小学部段階で重視している、好きな遊びを一緒に見つけ一緒に楽しむこと、やりたい気持ちを育て、やる気を持ち続けることがやがて老化防止にも繋がるのです。古い書物からまた学ぶことができました。温故知新です。

「先生は、おばあさんですか。」

「そうですね。」

「もうすぐ死にますか。」

「平均寿命だと85歳だから、あと20年くらいは元気で生きたいです。」

「それじゃ(しばし暗算に集中してから)、僕もあと65年は元気に生きます。」

先日、このような心温まる会話を楽しみました。子どもたちから元気をもらい、今年度もやる気を出して努めてまいりたいと思います。

 

老いて子に  遊ばれ遊び  花吹雪

                      2019.4.18