2023.06.28

高等部の総合学習「お茶会を開こう」

 大泉学園駅は今ちょっとしたブームになっています。現在放送中の朝ドラの主人公は、日本の植物学者牧野富太郎博士がモデルです。練馬大泉学園駅近くの「牧野記念庭園」は、博士の自宅と庭の跡地で、1957年に練馬区立の植物園として公開されました。東京都指定の文化財になっています。1957年に亡くなるまでのおよそ30年間この地にお住まいで、「我が植物園」としたこの庭で植物の観察や採集にと長い時間を過ごしていたそうです。そんな事とは知らず、40年前小学部の職員だった私は、小学部の日課の一つであった、朝のお散歩の目的地としてこの庭園まで歩き、学校まで戻るという活動をしていました。牧野さんという植物学者の住まい跡だということは説明書きから知ることができましたが、住宅地の一角にある草の生い茂った庭でしたので入ってもちょっと一周する程度のお庭でした。今は見学者も増えているようですので見応えを作っているのかもしれません。久しぶりに行ってみたい気もしてきました。

 当時の小学部の朝の散歩は、ご近所の公園や牛を飼っていた農家さんなどを目的地にしていました。お友達と手をつないで、道路の右側を歩く、車や自転車が来たら、端によって止まる、自然に歌いはじめることもありましたし、蝶々やトンボなどの虫たちを見つけたり,道端で草花を見つけたり、たんぽぽの綿毛を飛ばしたり、長閑な一時だったような記憶にすり替わっていますが、飛び出さないように、犬に近づかないようにとぎゅと手を引くこともあり、散歩中は緊張し、学校に無事到着するとほっとしていたようにも思います。それでもルールに従って歩くことは基本ですし、この移動する体力や道路の歩き方を身に付けることは、社会に踏み出すための大きな力になることを今さらですが、実感します。

 

 さて今回は、高等部の総合学習「お茶会を開こう」を紹介します。昨年度は茶畑に行き、茶摘みをしたり、手作りのお茶作りをしたり、教育実習生が茶道経験のある方で、3年生のクラスで抹茶を点てて飲む「茶道」を学ぶ研究授業を展開しました。とても良い体験になったので、今年度は学部全体で「総合学習 お茶」に取り組むことにしたそうです。実は、2年ほど前からご近所の茶道教室に通い出していたのですが、その師匠から「特別支援学校で、茶道をやってほしいと頼まれたが、どうしたらいいか。」と相談されました。面白そうだけど、対象となる生徒の様子や人数など詳しく聞いてみないと、と話を聞くうちに、旭出学園の高等部の教職員が師匠の娘さんと友だちでその経緯で頼まれたと知り、「えー!旭出だったのか!?」世間は狭すぎると思いました。師匠に紹介してもらった西武立川の茶畑で、今年は高等部全員で茶摘み体験をしました。お茶の歴史を学ぶ、お茶の種類を知る、抹茶を使った蒸しパン作りをするなどそれぞれのグループ毎に学び、まとめとしてみんなで「お茶会を開こう」で茶道体験をすることなりました。当日は師匠にも来校してもらい、お茶の点て方や飲み方を教えてもらい、お客さんになる⇒おもてなしをする⇒見学するというようにグループ毎で交替しながら、抹茶を点てて飲んで茶会の様子を見学するという体験を実施しました。「お茶を頂く時はまず茶碗を持って感謝して、一口飲んでおいしかったらニッコリしてね。」これがよく分かったようです。苦そうだし飲みたくないという生徒も何人かはいましたが、ほとんどの生徒が口の中を真緑にしてニッコリしていたのは驚きでした。自分の点てた抹茶を友だちに運ぶ時も堂々としていましたし、友だちの苦そうな顔もニッコリ顔もどちらもうれしそうに受け入れていました。全体がざわざわしつつも落ち着きがあって、和やかに茶会が開かれたことが不思議な感覚でした。「楽しかった!」師匠の感想です。その日は授業参観週間でしたので、保護者の方々にもお客さんになってもらい、3年生がおもてなしをしましたが、飲み方を見て「上手でした!」とお客さんを誉めていました。凄い、適応力です。高校生くらいだと外部の専門の講師から学ぶことも良い経験になるようですし、同じ空間で友だちの様子を見て学ぶということも有意義な様子でした。

感謝して一口飲んでにっこりとおもてなしする喜びを知る 

                           2023.6.22