2023.11.29

つねづね草 ~元校長のひとり言~

 11月23日、勤労感謝祭が学校と福祉園合同で開催されました。天候に恵まれて、穏やかな小春日和でしたので、グランドで行われた式典や製品販売やゲーム屋さんの模擬店でみなさんが買い物したり、ゲームを楽しむ姿をゆっくり眺めることができました。小学部の和太鼓の発表「わっしょい」が始まりました。可愛い掛け声が聴こえ、和太鼓っていいなあと思っていると、迫力ある「せんば太鼓」が轟き出しました。これもまた心地よい響きでした。正門近くの受付で、主に卒業生の参加希望のみなさんをお迎えしていましたが、福祉園の保護者のみなさんにもお久しぶりでお会いし、「お互いに元気でいましょう。」と励まし合うことができて、とてもうれしかったです。

 さて今回は、「放課後等デイサービス」についてのお話です。近年、放課後等デイサービスの事業所がたくさん開所され、利用者も増えていることは、下校時のお迎えの様子などからも実感できます。20数年前、保育園卒園後、小学校の下校時間は早く、仕事を続けるためには学童クラブに入れてもらわなくてはならず、保育園入所同様、学童クラブは更に狭き門でした。私の子ども達が入った学童は1学年30名程度全体で90名ほどの大規模学童クラブでした。その頃障害のあるお子さんを受け入れる枠は学年1枠、全体で3枠だったと聞きました。学童クラブの施設拡張や充実、受け入れの人数について市と交渉をする時、「障害児枠も増やしてほしい、そうでないと働けません。」という保護者の必死の意見を何度も聞きました。実現には時間がかかりましたが、時代は動きました。

 放課後等デイサービスは、「児童福祉法」により利用条件が定められ、障がいのある児童・生徒が対象になり、学校に通う6歳から18歳まで継続利用が可能です。高校卒業後も認められた場合は20歳まで利用可能です。その後は?という課題です。本校でも専攻科で20歳を迎える生徒の利用ができなくなります。「障害者総合支援法」に基づき提供される障害福祉サービスは受けられます。指定特定相談事業者に相談のうえ、アセスメントを受け、サービス等利用計画を作成し、障害福祉サービス事業所において具体的な取り組みを計画し、サービスの提供を受けることになります。受けられるサービスの種類・内容・量には範囲があり、サービスを提供する事業所の選択肢はかなり少なくなり、自己負担も大きくなります。福祉型就労事業所の場合、その就労時間は9時から15時の利用が一般的です。お子さんが成人すると、働くことと介護の両立がより一層難しくなるという現状があります。一人の障害児・者の生涯を見た時、支援の継続が必要な方は多いですし、文科省と厚生労働省が垣根を越えて連携する制度の見直しは不可欠です。まずは現状を多くの方々に知ってもらい、障害の有無に関わらず、共に分け合い、共に生きる風通しのよい社会をどう構築するか、理解の輪を広げ、知恵を絞ることが大事になります。

 本校の保護者が会長を務める「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」のセミナーの記事を読みました。知的障がいや発達障がい、肢体不自由や難病、医療的ケア児など様々な障がいや疾患のある子たちを育てながら、働く親たちの会です。子の年齢は乳幼児から社会人までと幅広く、仕事との両立のための工夫や、当事者ならではの育児の悩みに関する情報交換、企業内に障がい児・医療的ケア児の育児支援制度を創設してもらうなど、仕事と育児の両立を可能にするための働きかけをしています。

関連記事の中で目についたお一人の保護者の構想がありましたので抜粋します。

「重度の障がい児が学校に行きたいと思っても、就学猶予や就学免除の名目で入学が認められず、教育を受ける権利が奪われていた時代がありました。いま、全国各地に特別支援学校が整備されて当たり前のように学校に行けるようになり、放課後等デイサービスも利用できるようになった背景には、先輩である障がい児のお母さんたちが声をあげたことが大きかった。自分の子どもが利用するには間に合わなくても、後に続く人たちのためにやってくれた。障がい児の親でも働き続けやすい状況へと改善していくためにも、まずは学校を卒業した子らが、作業所の後に気軽に立ち寄ることができる『寄り道サロン』をどこでも当たり前のものにしたい。そうすることで、先輩たちの努力を引き継いでいきたい。」

事業所での活動を終えた利用者が、家に帰る前に仲間と過ごす場所『寄り道サロン』の構想、実現に向けて前に進むと良いなと思います。

教育と福祉は両輪生きる道理解と支援ずっと続くよ