2024.01.10

つねづね草 ~元校長のひとり言~

 新年明けましておめでとうございます。

 さわやかな挨拶をしたかったのですが、元日早々の令和6年能登半島地震に始まり、翌日は飛行機の衝突事故、そして北九州市の火災、天災も人災も時を選ばず、正月も何も関係ないということを、現場の悲痛な映像から思い知らされました。新潟に住む旧職員が思い浮かび、「落ち着いたら無事かだけ知らせて。」と早速メールを送りました。後で届いた返信には、「無事でいること、昨夜は避難所にいたけれど、今朝自宅に帰れたこと、スーパーも開いているので今の所大丈夫です。」とのことで安心しました。広い地域での大災害になっている様子でしたが、地域によって事情も異なり、被害に大きな差もあるようです。忘れかけていた頃にではなく、忘れる間も無く続いている災害に対して、やはり意識を強く持ち、備えねばならない年明けになりました。

 さて今回は、「身辺生活の自立 評価記録表」についてのお話です。旭出学園独自のものですが、教職員用の記録表として1991年に整理作成され、改訂を重ねつつ継続しています。本校においては小学部、中学部、高等部、専攻科に15年間在籍する児童生徒をはじめとして長い期間在籍する生徒がおりますのでその成長の様子を記録することは、卒業後の支援にも役立ちますし、成長の記録から学んだことを共有することが旭出学園の財産になります。一人一人の児童生徒の成長に寄り添う大切な記録の一つです。

 児童生徒の生活指導に当たり、適切な指導計画を立てるには、その子は何ができて何ができないか、何に困っているか、どのように解決していきたいかを観察し、仮説を立て、試行する、オーダーメイドの個別の支援計画を立てるための指標が必要になります。その指標として身辺生活全般を領域毎に項目を設定し、発達に応じて4段階に分けて細かく整理しています。例えば「衣服の着脱の技術と取扱い」の領域で、「衣服の調節」の項目では、学部による達成目安を、小学部では汚れたり、濡れたりしたら自分から取り替える、中学部では寒暖に応じて脱いだり来たりができる、高等部では学校行事や日課に合わせて自分で着る服が選べる、専攻科ではTPOに合わせて自分で衣服の調節ができる、としています。「生活の軌道」の「1日の過ごし方」では、寝る時間になったことを告げられるとすぐに支度して寝ようとする、寝る時間が分かり自分から支度して寝ようとする、寝坊しないように自分で気を付ける、必要な時間を考慮して時刻に合わせ一人で起きることができる、と社会人になってからを想定して目標の段階が上がっています。項目や文言については、時代や環境の変化と共に修正が必要な個所もありますので、その都度改善し、利用しやすくしていくものでなければなりません。個別の記録表ですから在籍学部でその目標が達成できなくても継続課題として達成できるように支援をする、達成できれば次に進める、個別の支援計画として取り組むようにします。

 保護者につけて頂く「家庭生活調査」もあり、これは創立当初からご協力いただいています。ご家庭の様子を知り、ご家庭と学校で一貫性のある教育支援をするためのものです。現在、小学部は1・3・5年生、中学部、高等部、専攻科の1年生の時に記録してもらっています。クリアしたところがあればうれしいですし、保護者が現状を再確認し、何を優先課題に指導計画に盛り込むべきか、担任にも伝えやすくなると思います。身辺自立や生活習慣は広範囲ですし、変化も緩やかなことも多いので見過ごされがちですが、ボタンができた、歯磨きができる、一人で寝られた、駅から学校まで歩けた、それら一つ一つが大きな達成感に繋がり、自己肯定感を生み出します。何もかも完璧にできるはずはないことは、我が身を振り返ればわかりますが、できないことは「お願いします」「ありがとう」、分からないことは「わかりません」と意思表示できることが大切ですし、支援もしていますので「意志交換の表示」には加えるべき項目だと思います。記録表自体が完璧なものではありませんが、そこから見直して積み上げることは続けていきたいと思います。

誉められて一人でできる喜びは自信を作る自分を作る